自動車の歴史を変えるかもしれない電気自動車(EV)が登場しました。
米Tesla Motors(テスラモーターズ)が2016年3月31日に発表した、小型セダンEV「Model 3」です。
インターネットで予約販売を開始した「Model 3」は、わずか1週間で32万5000台の予約を獲得。
トヨタ自動車の人気ハイブリッド車「プリウス」の年間販売台数に匹敵します。
「Model 3」の納車開始は2017年末とされ、1年9カ月も先の話。
ほとんどの予約者は発表のインターネット中継の映像を見た程度で、実際のクルマを見ていません。
予約する際には1000米ドル(約11万円)を支払わなければなりません。
それでも消費者が殺到したのは、「Model 3」の性能と価格のバランスが現在市販されているEVを圧倒しているからです。
価格は、同社の現行EVの半額以下となる3万5000米ドル(約380万円)。
国・地域によって異なるものの、数十万円規模のエコカー向け補助金を利用できれば、実質負担額はさらに低く抑えられます。
クルマ自体の性能も優れています。
停止状態から6秒以下で時速100km以上に加速。
米国環境保護庁(EPA)基準で、1回の充電で走行可能な距離は215マイル(約345km)以上を予定。
2016年モデルの日産自動車のEV「リーフ」の107マイル(約172km)の2倍程度に相当します。
さらに「Model 3」は、高速道路などで利用できる「オートパイロット(自動運転)」に対応するハードウエアをベースモデルから標準搭載。
現時点で同社の高級セダンのEV「Model S」は、レーンに沿ってハンドルを切る「自動ステアリング操作」、高速道路などで自動的に車線を変更する「自動レーン変更」、そして「自動駐車」の機能を装備でき、こうした機能を進化させたものが「Model 3」に搭載されそうです。
テスラ会長兼最高経営責任者(CEO)のElon Musk(イーロン・マスク)氏は、高価なEVの大幅なコスト削減を実現するための準備をしたたかに進めてきました。
とりわけ重要なのが、EVのコストで最大となる心臓部の電池です。
世界最大のリチウムイオン2次電池工場「Gigafactory(ギガファクトリー)」を米ネバダ州に建設。
年間50GWhの電池パックの生産を予定しており、部材の一括調達と大量生産による規模のメリットを追求。
日本メーカーでは「パナソニック」などが資金・技術面で協力しており、さらにネバダ州政府も12億米ドル(約1300億円)の補助金を提供します。
マスク氏はEVが想定ほど売れない場合のリスクにも備えています。
ギガファクトリーで生産する電池は、テスラが家庭や工場などに向けて販売する蓄電池としても供給する方針。
既に蓄電池の受注も開始しており、こちらも膨大な数の予約を獲得しています。
一見順調に映る「Model 3」の未来ですが、量産体制の確立に向けてはハードルがあります。
例えば、テスラは2012年に発売した高級セダンの「Model S」に続き、2015年9月に多目的スポーツ車(SUV)の「Model X」を発売。
しかし、「Model X」は開発に手間取り、発売時期が当初計画から大幅に遅れただけではなく、カモメが翼を広げたような跳ね上げ式ドア「ガルウィング(ファルコンウィング)」の取り付けが難しいなど生産面で課題が生じ、量産が始まってからも生産台数を計画通りに引き上げられませんでした。
テスラのカリフォルニア州のFremont工場は、もともとトヨタ自動車と米General Motorsの合弁工場だった「NUMMI」の跡地を買い取ったもので、年間50万台まで生産規模を高めることが可能です。
2015年のテスラの販売台数は5万台強です。
予約台数を考慮すると、短期間に量産規模を大幅に拡大する必要があります。
Fremont工場の生産ラインは複数の車種を混流生産できるように設計されているが、「Model S」と「Model X」に加えて、「Model 3」も効率的かつ高品質で量産できる体制を軌道に乗せるには入念な準備が求められます。
急増する従業員の教育も課題です。
テスラはトヨタ流の生産ノウハウに詳しい技術者などを雇用しているが、大規模な量産経験がないだけに人材育成に苦労することが予想されます。
マスク氏は、これまで何度も危機を乗り越えてきました。
手ごろで高性能なEVを世界で普及させ、自動車産業を根底から変えるというマスク氏の野望は達成されるでしょうか。
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2016年06月17日
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